中性脂肪(中性脂質)とは脂肪酸のグリセリンエステルを指します。
中性脂肪はグリセリン1分子と脂肪酸3分子が結合したもので、脂肪酸としては分子のなかにCを16個または18個もっているの(パルミチン酸・ステアリン酸)が多いです。
分子のなかのC原子間の結合が二重結合をもっているのを不飽和脂肪酸といって、オレイン酸・リノール酸・リノレイン酸・アラキドン酸などがあります。二重結合をとくにもたないものを飽和脂肪酸といいます。
グリセリン脂肪酸エステルにはモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドが存在しますが、血液中に含まれる中性脂肪のほとんどはトリグリセリド(TG)です。一般的に中性脂肪=トリグリセリドとして扱われています。
中性脂肪はおもに皮下組織や腹壁などの貯蔵脂肪として存在していて、細胞の成分になるとともに、燃焼してエネルギー源となります。余分になったものは脂肪組織中に蓄えられ肥満の原因となります。
中性脂肪の基準値
トリグリセリド(TG) 基準値;35~150mg/dl
男性は女性に比べて高い値を示すと言われています。
男女ともに年齢とともに上昇して、60歳を超えると下降傾向になります。
食事内容によって基準値より高くなったり、低くなったりします。
一般的カロリー摂取量と関係があり、脂肪・炭水化物を多く摂ると高くなります。
中性脂肪が高い
中性脂肪は食事中の脂肪量と吸収の割合で程度がことなり、食後の4~6時間後に一番高くなります。
検査で血液を調べるときには早朝空腹時もしくは12~16時間絶食後の採血が望ましいです。
高い値となる場合の原因としては食事摂取量の過剰、アルコールの多飲やリポ蛋白リパーゼ(LPL)の欠損や機能異常が考えられます。
中性脂肪が高い値である場合は動脈硬化の危険因子となり、また急性膵炎発症の危険因子となりうります。
中性脂肪の高値は冠動脈(心臓を包んでいる血管・心臓の筋肉に酸素や栄養を送る血管)硬化を進めるとされています。
中性脂肪(TG)の300mg/dl以下の単独では冠動脈狭窄の因子にはなりませんが、高コレステロール血症や低HDL(高比重リポ蛋白)血症があるときには冠動脈狭窄を進める因子となります。
TG値が1000mg/dl以上であるときは急性膵炎の危険因子となり速やかな低下治療が必要となります。膵炎の発生機序はいまだに不明なことが多いのですが、膵リパーゼより産生された脂肪酸の組織障害によると考えられています。
中性脂肪が低い
中性脂肪が高いと動脈硬化などを引き起こす原因となりますが低いからといっても問題がないということではありません。
中性脂肪は身体のエネルギー源ともいえるので基準値を大きく下回るのはエネルギー不足となり慢性的な疲労の原因となります。
低くなる原因としては過度なダイエットによるエネルギー量の不足が上げられます。
内分泌疾患の甲状腺機能亢進症・副腎不全・下垂体機能低下症などを患っている人は低値をしめします。
その他に肝疾患(慢性肝炎・肝不全・肝硬変など)や吸収不良症候群を患っている人も低値となります。
中性脂肪を下げるには
脂肪・炭水化物を多く摂取すると高値となります。エネルギー量を低く抑えやすく、自然と脂質(油)が控えめで、食物繊維やビタミンを摂りやすい和食に変えましょう。
食事を摂るタイミングを変えます。空腹を感じているときは、中性脂肪が分解されているので、お腹が空いて30分以上経ってから食べることも大切です。
植物ステロールは、コレステロールの吸収を妨げる役割があると言われています。大豆や玄米・胚芽に多く含ませているとされ、これらを積極的に摂るようにしましょう。
食物繊維は腸内でコレステロールや脂肪分を包み込み、体外に排出する働きがあります。野菜や海藻、きのこ、玄米など未精製の穀類などを献立に盛り込みましょう。
適度な運動を取り入れましょう。有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、エアロビ、水泳など)を、1日30分以上行うとよいです。
まとまった運動をする時間が取れないときは、日常生活のなかで工夫をしましょう。例えばエレベーターを使わないで階段を使ったり、電車・バスの中では椅子に腰掛けない。目的地の一駅前で降りて歩くようにするなどです。食事の改善とも組み合わせるとより効果が期待できます。
中性脂肪の薬
総コレステロール値が220~250mg/dL、中性脂肪200~300mg/dL以上を目安として薬物治療を開始します。
使われる薬物を数例紹介します。
ニコチン酸誘導体:中性脂肪低下やコレステロール低下及びHDLの増加などの作用があります。
HMG-CoA還元酵素:コレステロール低下作用や動脈硬化を抑制すると言われています。
フィブラート系薬剤:肝臓内での中性脂肪生成を抑制して、胆汁へのコレステロール排泄量を増やすことで中性脂肪が減少します。HDLが増加する作用があります。
イコサペント酸エチル:トリグリセライドやコレステロールの吸収をおさえたり、肝臓での生合成をおさえ、さらに肝からのトリグリセライド分泌抑制作用を示します。