人工透析

透析を受けている人は現在30万人を超えています。末期腎不全のための腎機能代替療法には腎臓移植、腹膜透析、血液透析があります。

このなかで血液透析は日本国内では約95%となっています。血液透析とは体外循環を用いて廃絶した腎機能を人工腎臓で代行する治療です。

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人工透析とは

末期腎不全の治療として行われる腎代替療法には大きくわけて血液透析、腹膜透析、腎移植があります。人工透析とは血液透析と腹膜透析を指します。

人工透析(血液透析)は半透膜を介した血液を透析液の間に生じる溶質の拡散と限外濾過の2つの原理を用います。

拡散は半透膜の孔のサイズより小さな物質は濃度の高い方から低い方へ膜を越えて移動することをいいます。血液透析では除去したい物質が血液側から、それらを含まない透析液側に拡散します。

限外濾過とは半透膜の一方に静水圧を加えると膜を超えて水(溶媒)と孔より小さい物質が移動することを限外濾過といいます。血液透析では透析液側に陰圧をかけて血液側から水などが透析液側に限外濾過をします。

腹膜透析では高濃度のブドウ糖などを含んだ浸透圧の高い透析液と半透膜である腹膜を介して血液と接触させると拡散と浸透圧差による限外濾過で水と孔より小さい物質が透析液側に移動します。

ダイアライザー(人工腎臓)で物質交換を行っています。
コイル型、積層型、中空糸型、などさまざまな種類のダイアライザーがありますが、現在臨床で1番多く使用されているのは中空糸型です。

中空糸型は半透膜で直径200~300μgのストロー状の中空糸が約1万本、直径5~8㎝、長さ20㎝ほどのハウジングの中に入って構成されています。血液流入部は流体力学的に血液が均等に中空糸に流れ淀みが起こらないように工夫された形状になっています。

中空糸型のダイアライザーの特徴は積層型に比べるとプライミング(ダイアライザー内の空気や充填液を洗い流す作業)ボリュームが少なくてすみます。
約1万本の中空糸で構成されているため膜破損による漏血が少ない段階で発見できるため失血が少なくてすみます。

ダイアライザーは透析膜の素材により小分子物質(尿素・クレアチニン・尿酸など)の除去に優れたセルロース系と中・高分子物質(β2ミクログロブリンなど)の除去に優れる合成高分子系や中間の能力を有する半合成繊維系に分類されます。

セルロース系;再生セルロース膜、酢酸セルロース膜
半合成繊維系;トリアセテート
合成高分子系;PAN(ポリアクリルニトリル共重合体)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PS(ポリスルホン)、Eval(エチレンビニルアルコール共重合体)、PA(ポリアミド)、PEPA(ポリエステル系ポリマーアロイ)
膜保護のための工場出荷時にダイアライザー内に滅菌水を充填したウェットタイプとグリセリンなどを使用したドライタイプがあります。

人工透析 原因

人工透析にいたる原因としては、糖尿病性腎症 44.2%、慢性糸球体腎炎 20.4%、腎硬化症、多発性嚢胞腎などがあります。
腎障害の機序は違っていても進行すると機能するネフロンが減少して、残存しているネフロンに過剰な負担がかかり、さらに機能するネフロンが減少していくという悪循環は共通しています。

人工透析 医療費

特定疾病療養受療制度;人工透析を受けている人の自己負担金を軽減してくれる制度です。
健康保険に加入している人工透析を受けている人全てが対象となります。人工透析の医療費自己負担は1か月1万円が上限となります。ただし、一定以上の所得のある人は2万円が上限となります。
外来、入院、調剤薬局など、それぞれで医療費の負担金を支払うことになります。
また、入院中の食事代は全額自己負担です。

特定疾病療養受療制度の申請方法; 申請に必要なものは特定疾病療養受療証交付申請証、保険証、印鑑の3点です。
特定疾病療養受療証交付申請証に人工透析を受けている医療機関の医師に記載・捺印をしてもらい、加入している保険者(健康保険組合や健康保険協会、共済組合、国民健康保険は区市役所・町村役場の国民健康保険課)や後期高齢者広域連合の窓口で申請し、「特定疾病療養受療証」の交付を受けます。
受療証が届いたら、通院している医療機関へ提示します。

 

人工透析 障害者手帳

障害者認定指標
1級:血清クレアチニン濃度 8.0㎎/dl以上、内因性クレアチニンクリアランス値 10ml/分未満
自己の身辺の活動が著しく制限される。
血液浄化(人工透析)を目的とした治療を必要とする。もしくはきわめて近い将来に必要となる。
3級:血清クレアチニン濃度 5.0㎎/dl以上 8.0㎎/dl未満、内因性クレアチニンクリアランス値10ml/分以上 20ml/分未満
家庭内のきわめて温和な日常生活活動には支障がないがそれ以上の活動には著しく制限される。
腎不全に基づく臨床症状のうち、いずれか2以上の所見がある。
4級:血清クレアチニン濃度 3.0㎎/dl以上 5.0㎎/dl未満、内因性クレアチニンクリアランス値20ml/分以上 30ml/分未満
家庭内での普通の日常生活活動もしくは社会でのきわめて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動は著しく制限される。腎不全に基づく臨床症状のうち、いずれか2以上の所見がある。

身体障害者手帳を所得するとさまざまな控除が受けられます。
ただし、障害等級や控除・助成内容によっては活用できるものと活用できないものがあります。
また、都道府県によっても違いがあります。
どのようなものが活用できるか例をあげられます。(北海道・札幌市の場合)
税控除:特別障害者控除 1・2級 所得税40万円、住民税30万円 
障害者控除 3~6級 所得税27万円 住民税26万円
タクシー:1割引き
JR運賃:一種 本人・介護者ともに50%割引き
これ以外の詳しい内容は保健福祉部健福祉課に問い合わせましょう。

 

人工透析 食事

合併症がない透析生活を送るためには食事管理が重要となります。
透析中の食事の目安(週3回の透析の場合の基準)

エネルギー:30~35cal/kg/日
必要なカロリーが不足すると身体の脂肪やタンパク質が燃えてエネルギーとなるため異化亢進(細胞が早く壊れる)となります。
カロリー補給のポイントは、揚げ物や炒め物など油を使って調理したり、マヨネーズやドレッシングなどを用います。

タンパク質:1.1~1.3g/kg/日
タンパク質が不足すると栄養不良となり、貧血や感染症にかかりやすくなります。低アルブミン血症が続くと予後不良であると言われています。食事のポイントは良質のタンパク質をとることです。低リン食品(低リンミルクなど)を利用します。

リン:800~1000㎎/日以下(15㎎/kg/日以下)
透析患者の合併症に腎性骨症や二次性副甲状腺機能亢進症があり、高リン血症が関連しています。
リンを制限するためのポイントは、リン含有量の多い食品は使用しないように、使用を加減するように心掛けます。
例えば、ウナギやレバー、チーズ料理は食べる量や回数を控えたり、肉・魚の加工品(ソーセージやかまぼこなど)にはリンが含まれているので食べる量を加減します。乳製品(牛乳やヨーグルトなど)は低リン食品を利用するのも手です。

カルシウム:600㎎/日以上
透析患者は活性型ビタミンD3剤やリン吸着剤として炭酸カルシウムを服用するのが一般的になっています。したがって食事からのカルシウム摂取量不足は補われているため、意識してカルシウムを摂る必要はありません。むしろ、カルシウムを摂取しようとするとリンも同時に摂取してしまうため高リン血症になります。

カリウム:40~50mEq/日(1600~2000㎎/日)
カリウムの摂取過剰は不整脈の原因となり、ときには急死の危険があります。
カリウムを制限するためのポイントは野菜は水にさらしたり、茹でこぼしてから使います。カリウムの多い食品(果物・豆類・イモ類など)は取る量を控えるようにします。栄養補助食品(青汁など)は摂らないようにしましょう。

食塩:7~8g日
塩分を摂りすぎると血液中の浸透圧が上昇して、口渇がおこり水分が欲しくなり、透析間の体重増加に影響をおよぼします。
塩分制限のポイントは、調理のときにレモン、酢などの酸味を利用したり、香辛料で減塩をごまかすようにします。食べるときは醤油はかけないでつけて食べるようにします。熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに食べるようにします。

人工透析 シャント

内シャントはバスキュラーアクセスのひとつです。
バスキュラーアクセスとは透析を行う時に血液を出し入れする部位や装置を指します。
近年、糖尿病性腎症や長期透析を受ける方の増加、高齢化などにより自分の血管を使った透析を受けることが困難な場合はさまざま方法で血液の出し入れを行います。これを世界共通の呼び名でバスキュラーアクセスという言葉を使うようになりました。

自己血管内シャント;シャントは静脈の動脈化です。一般的に前腕に頭骨動脈と橈側皮静脈を吻合する方法が広く取られます。肘関節付近で動脈と静脈を吻合する場合もあります。

人工血管内シャント(グラフト);動脈と静脈を人工血管でつなぎ合わせるシャントです。自己血管が細い場合や荒廃している血管などで自分の血管での内シャントを作成するのが困難な場合に用いられます。前腕での作成が第一の選択となりますが難しい場合は上腕や大腿部に植え込むこともあります。人工血管の素材はE-PTFEがもっぱら用いられますが、PU、PEPの使用も可能となっています。

表在化動脈;上腕の深部に走行する動脈を皮下直下に持ち上げて、穿刺や止血を簡単にできるようにした方法です。シャントによる心負荷や末梢循環障害の増悪が予想される場合などで選択されます。

留置カテーテル;緊急透析導入時やシャントトラブル時での一時的に使用する場合とバスキュラーアクセス作成困難のような長期的に使用する場合があります。多くの場合は内頸静脈に挿入して皮下にトンネルをつくって前胸部で体外にカテーテルを出します。透析が終了したときにカテーテルが閉塞しないように抗凝固剤を充填します。

バスキュラーアクセスは長期の使用によりさまざまは合併症が起きることがあります。
全身に現れる合併症;不整脈、労作時の息切れ、動悸、頻脈、心胸比の拡大などです。シャントによる血液量の心拍出量増加が原因です。
局所の合併症;①内シャントの動脈瘤、人工血管の周囲に現れる血清腫が現れることがあります。動脈の高い圧力が静脈に流れ込むことで内側の壁が薄くなったりすることで瘤ができます。破裂の危険性がある場合は外科的処置が必要となります。血清腫は人工血管の壁から漏れ出た血漿が人工血管の周囲に溜まった状態で、修復の必要はありません。

②内シャントの狭窄・閉塞は1番多い合併症です。繰り返しの穿刺により血管の荒廃や血液の乱流や渦流の影響、シャントを作成したときの吻合の問題などが原因となります。閉塞した場合は手術が必要となりますが狭窄の場合は血管内治療(PTA)を行います。

③静脈高血圧。シャントの静脈側の狭窄や閉塞によって、手指や手掌、腕全体が腫れるようになります。血流を変える手術を行うことで症状が改善されることがあります。

④スチール症候群。シャントをつくったことで末梢の血液の流れが悪くなり、指先や手のひらが冷たくなったり、シビレや痛みが起きます。重症化すると指先などに壊死がおきます。他の場所にバスキュラーアクセスを作成することで改善します。

⑤感染症。皮膚の穿刺孔から常在菌(黄色ブドウ球菌など)などによって感染がおきることがあります。原因としては同じ部位の穿刺、穿刺部の不潔操作や消毒不足、不十分な止血があげられます。穿刺の前にシャント肢をよく洗っておくことで感染に至る危険を減らすことができます。

 

人工透析 時間

1回の透析時間は3~5時間です。透析時間は長い方が生命予後が良いとの説があります。
透析回数は1週間に2~3回です。

 

人工透析 寿命

透析導入年齢によって寿命は違います。二十代で導入した人と七十代で導入した人では5年生存率が違うというのは人工透析に関して知識がなくてもわかることだと思います。最近はダイアライザーや透析液、透析監視システム、内服薬、注射薬などあらゆる面で良くなっているため日本で透析治療が開始されたときと比較すると長く生存できるようになりました。しかし、ここ数年透析導入年齢が高くなっているため数字上の生存率は変わらない、むしろ30年以上生存率が減る傾向にあります。
また、自己管理がしっかりとしている人とルーズな人とでは生存率(寿命)に違いが出ます。透析間の体重増加率はドライウェイ(DW)中1日3%、中2日5%が目標となっています。この、体重増加率を守れない人は予後不良、つまり寿命が短くなるということです。
人工透析を長くしているといろいろな合併症が起きてきます。なかでも閉塞性動脈疾患で足を失うと5年生存率がガンによる5年生存率と同じと言われています。

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