約6年前のカンボジアとエジプトの旅行記です。
バックパッカーで旅をし遺跡をめぐるために成田からカンボジアへ行きました。
見たかったのはアンコールワットですが、ポルポト政権時代の悲しい歴史を巡ったり、ベトナム戦争などの背景も知りたいという目的もありました。
カンボジアではシェムリアップに降り立ち、1泊250円ほどの安宿をとってアンコールワットへ入る旅程を立てます。
空港を降りたときからバイクタクシーの兄ちゃん(名前を「ナッ」という)が声をかけてきて、「俺のバイクに乗りなよ。どこでも連れてってやるぜ。」というので、彼に旅の足を託しました。
とても気さくで好青年だったので、アンコールワット観光はもちろん、3週間ほどのカンボジアの旅はとても楽しいものになりました。
まずはアンコールワットでお布施の強要
しかし、どこへ行ってもトラブルはつきもの。
アンコールワットのすぐ近くに仏教寺院があったので、そこで昼寝をしていると、高床式倉庫のような家の中からあやしい男が1人でてきました。
彼は突然、「この寺へ立ち入ったならば、仏の加護を受けなければならない。」と言って、私に20$を要求してきました。
アジアも中東も、旅人に対して容赦がありません。こちらがゆっくりとくつろいでいるヒマを与えず、間髪入れずに理由をつけては金を要求してきます。
当然、「なんで金を払う必要があるんだ!」と口論になりました。
男は「仏の力を何だと思ってるんだ!入場料を払え!」とまくしたてます。つい1分前には「仏の加護に対してのお布施」という設定だったのが、今は「入場料」に。
単に金が欲しいだけだとわかっているので、「払うわけないだろ!」と一喝してその寺をでました。男は「チッ、とれなかった」と残念そうな顔をしていました。
中東エジプトのお布施事情
続いては中東エジプトのお布施事情です。
日中40℃を超すエジプトの夏は、昼間など長時間歩いていては全身焼かれてしまいます。そのため、露店でビン入りのジュースを1本買って、モスクの中で一休みするのです。
あるとき、オールドカイロの路地裏にあるような辺鄙なモスクに入って中に座っていると、突然、かっぷくの良い男が出てきて私を怒鳴りつけました。
「メッカの方向はどっちだ!!」
私はモスクの中にある礼拝場所からメッカの方向を指さすと、男は突然「わかってるなら金を払え!」とまた大声をあげました。
もう笑うしかありません。
何の理由があって金を要求しているのか、もはや男の言い方は神の名をかたった恐喝です。
私は内心「またか、ゆっくり昼寝させてくれ。」と思ってあしらおうとしました。
しかし、男は食い下がり、「お前はそれでも男か!」とまくしたてます。
もちろん、モスクに入ったら金を払う、お布施を出すなどという習慣や文化は存在しません。単なる恐喝です。
カンボジアの仏教もエジプトのイスラム教も、宗教を理由に金をよこせと迫ってくるのは共通していて、「地獄に行ったらこのとき払った金で助けてもらえるから」と訴えてきます。
観光地以外でもこういった金銭トラブルはつきものなので、結果、私は彼に1エジプトポンド(20円)だけ払うことにしました。
タダではあげられないので、彼にモスクの中央に立ってもらい、礼拝の呼び声を唱えるよう要求しました。すると、その男の怒鳴り声はとつぜん太い美声に変わり、モスクの中に天を突くようなアザーンが響き渡りました。
横暴な恐喝犯は、実はモスクでアザーンを唱える聖職者だったようです。