恐ロシアのトランジット、シェレメーチエヴォ国際空港から出られない!?救ってくれたのはアニメおたくのロシア人

大学院生のとき、スイスで開催される国際学会に参加することになり、約2週間ほどヨーロッパに滞在することになりました。
学生だったので、旅費を極限まで抑えようということになり、飛行機をヨーロッパの直通ではなく、ロシアでの乗り換えをする旅程にしたのですが、安い航空機チケットを取るためには、どうしてもロシアでの一泊が必要に……
出国前にロシア大使館でビザをとったりいろいろ苦労して、重い荷物を抱えて飛行機に飛び乗り、大空へ。そして、ロシアに降り立ちました。
まずレギュレーションカード(?)を飛行機内で書くように渡されたのですが、書き方がよく変わらず、税関を通るのに一時間弱。
何だかおしゃれな女性職員二人組に値踏みするように見られながら、なんとか関税を通過して、荷物を受け取り、いざ空港から外へ出ることになりました。
というのも、予約したホテルが空港のすぐ近くだったはずだったので、徒歩でホテルに行く予定だったからなのですが……
そもそもシェレメーチエヴォ国際空港から外に出る方法が分からない。
車道ばかりで歩道もなく、どう歩けばいいのかも分からない……ホテルは空港の近くのはずなので『まぁつくだろう』とたかをくくって空港館内を歩いていると、『インフォメーション』と英語で書かれた窓口を見つけました。
ここなら英語が通じるだろうと「Can you speak English?」と聞いてみると、恐らくロシア語で、両手の手のひらを天に向けながら『英語はわからない』と言われてしまいました。
途方にくれること2時間弱、なんとか歩いて空港の外に出ることができたものの、ホテルへの道順が分からずに、迷子状態になってしまいました。
どんどんと日が暮れていく中、重たいスーツケースを押したり引いたりしながら歩いても、全くホテルにつく気配はありません。
ロシア語が全くわからないし、それほど使わないだろうと、ロシアのお金の用意も少なく、不用意にタクシーを利用することもできませんし……困り果てているところに、英語の堪能な所謂『白タクシー』のお兄さんが話しかけてきてくれました。
「日本のアニメが好きなんだ」というそのお兄さんは、『そのホテルなら知ってるから君の手持ちのお金の5分の1で今日と明日往復の面倒を見てあげるよ』とおっしゃるのです。
失礼ながら、限りなく怪しいとは思いつつも、もう空も薄暗く、これ以上フラフラするのはもっと危険だと判断して、その好意に甘えることにしました。
鼻歌交じりに運転するお兄さん。鼻歌は涼宮ハルヒの憂鬱のOP曲でした。
ドンドン空港から離れていく車の窓の景色を見ていると、鬱蒼とした森のようなモノの中に入っていきます。
『空港近く』のホテルだったはずなのに……不安は頂点に達して、私も同行していた後輩も「殺されたかも」と覚悟を決めました。
旅費をケチらずに、もっときちんとした旅程を組めばよかったと後悔しつつ、固唾をのんでいると、ぱっと窓の外の景色が開けて、大きなホテルが見えました。
ホテルの名前を確認すると、止まるはずだったホテルで間違いなようでした。
私も後輩も、お兄さんを疑ったことを激しく後悔しました。
結局、旅行代理店の手配したホテルの地図が間違っていて、そもそも空港から歩いていけるような場所にホテルがなかったのでした。
泊まったホテルは快適で、お兄さんには感謝してもし足りないくらいでした。
翌朝もきちんと迎えに来てくれて、空港に向かう車の中では、日本のアニメの話で盛り上がりました。
『またロシアに来ることがあったら、連絡してくれ』とアドレスを交換し、そのお兄さんとは、未だにメールのやり取りをしています。
空港から出られない。ホテルにたどり着けない。と、散々だったロシアのトランジットでしたが、お兄さんのお陰でなんとか旅程をこなすことができたのでした。
本当に、思い出深い旅行となりました。
神奈川県に住む30代の男性の方からいただいたロシアのトランジットのエピソードでした。
言葉の通じない異国の地で路頭に迷う。事件に巻きこまれてもおかしくない状況で、英語の話せる日本のアニメ好きの方に救われるって!なんという強運!エピソードを聞いただけで、ちょっとだけ運を分けてもらえた様な気になるのは私だけでしょうか?